醸匠ま津風

ブログ

ブログ

こんにちは、醸匠ま津風です。いつも、ブログをご覧いただき有難うございます。

今日は、日替わりメニューに登場した、『シャリアピン風』とは何かをご説明したいと思います。

まず、シャリアピンと言うのは、人名で、20世紀初頭に活躍した、ロシアのオペラ歌手を指します

フョードル・イワノヴィチ・シャリアピン Fyodor Ivanovich Chaliapin (1873-1938)

1936(昭和11)年に公演のために来日したシャリアピンは、その時歯の治療中でどうやら歯痛に苦しんでいたようです。しかし、一方では自身大好きな肉も食したい。日本に来た以上、和牛料理をなんとしても食べたいと切に願うのですが、どうも歯の調子がよろしくない。

そこで、当時宿泊していた東京の帝国ホテル内のレストラン『ニュー・グリル』の料理長、筒井福夫ムッシュに相談して、柔らかいステーキを所望しました。

筒井ムッシュは、熟考ののち、日本のすき焼きが白ネギと一緒に煮込むことで肉が柔らかくなることに思い至り、すりおろした玉ねぎに、薄く叩いて伸ばした肉を漬け込んで柔らかくすることを発想しました。

これは、科学的にも証明されていて、玉ねぎに含まれるタンパク質分解酵素“プロテアーゼ”の作用により肉が柔らかくことを利用した調理法になります。

シャリアピンはこのステーキに大満足し、ホテル側から是非、氏の名を冠した料理名を付けたいとの要請に、快諾を与えられたそうです。

私どもも、この故事にならって身近な鶏もも肉を、さらに美味しくしたいと言う願いをもって、本日のフライドチキンを作りましたが、お召し上がりいただいたお客様、いかがでございましたでしょうか?

なお、このシャリアピン・ステーキは、ご覧の通り日本発祥のフランス料理と言うことになりますが、実はその後の発展の仕方が実に興味深いのです。この調理法が、のちに本国フランスに逆輸入されて、フランスでは玉ねぎの近似種、エシャロットのすりおろしを用いて、シャリアピン・ステーキによく似たマリネ・ステーキが作られるようになりました。

料理は、国境を越えて、大陸と大洋を隔ててもなお、共感と深化を遂げられることの実例をみた思いがします。